自己紹介

自分の写真
理学療法士による身体活動研究チャンネル。医学に関する専門的な知識を動画を使い説明しています。解剖、運動、生理学はテキストで勉強するよりもビジュアルを通して学んだ方が記憶にのこるのではないかと思い、学生時代からこの活動を始めました。今後は臨床で感じた新たなニーズを等身大で表現していきたいと思います。※身体の活動には個人差があります。ご心配な方はお近くの医療施設にご相談下さい。

2011年5月5日木曜日

【運動学】伸張反射 Stretch Reflex : 身体活動研究



伸張反射について

【筋紡錘と腱紡錘の構造】

筋には感覚受容器として筋紡錘と腱紡錘(腱受容器,ゴルジ終末)とがあり,筋の状態(筋の長さ)を脊髄に伝える.

筋紡錘は筋内にある長さが6~8mmの固有受容器である.形態は紡錘形で,筋の長さを検出する機能をもつ.筋紡錘の中央は非収縮性で,受容器を含み,両端には収縮性筋線維の錘内筋線維があり,これで錘外筋線維に結合する.鍾内筋線維は太い核袋線維と細い核鎖線維に分けられる.前者には動的と静的とがある.動的核袋線維の興奮は動的γ線維の活動で起こり,運動中に1次終末の長さ変化への感度を高めるが,2次終末への影響はあまりない.静的核袋線維は静的γ線維支配を受け,一定長にある筋の1次終末,Ⅰa線維の発射間隔を制御する.Ⅱ線維の発射頻度にも影響する.核鎖線維も静的γ線維の支配を受け,主に2次終末の感度を調節する.筋紡錘らせん型終末(1次終末)からの線維はⅠa線維,散型終末(2次終末)からの線維はⅡ線維である.

腱紡錘からの線維はⅠb線維である.腱紡錘は長さ約1mm,直径0.2mmの螺旋形で,筋線維の終末近くの腱にあり,腱に加わる張力を検出している.Ⅰb繊維の発射は張力に比例する.Ⅲ線維は筋圧受容器からの線維であり,痛覚に関係する.


【伸張反射のメカニズム】

骨格筋を急速に伸ばすとⅠa,Ⅱ線維からの入力によって筋紡錘が興奮する.そこから発する求心性入力は脊髄に伝わり,同じ筋の運動ニューロンに単シナプス性に興奮を伝えて,その筋のα運動ニューロンは興奮し筋収縮が起こる.これを伸張反射という.筋が短縮すると筋紡錘への刺激が減り,求心性入力は減少する.ひとつの筋の求心性線維(Ⅰa線維)は,その筋と共同筋の運動ニューロンとに興奮性に結合し,拮抗筋には抑制ニューロンを介して結合する(Ⅰa抑制).腱紡錘の閾値は筋紡錘の閾値よりも高い.そのため,筋は伸展されると伸張反射が起こるが,極度に伸ばされると筋断裂を防ぐために腱紡錘の興奮によってⅠb線維を通じ筋活動は抑制されて弛緩する(Ⅰb抑制).これが折りたたみナイフ現象の機序である.筋の伸展あるいは筋収縮の状態により,これらの神経線維群は異なった発射を行っている.このうち腱反射に主に関係するのはⅠa線維である.

伸張反射は伸ばされた筋がもとの長さに戻るように働く(自己調節機構).その反射弓は筋長を一定に保つための自己調節環である.

α運動ニューロンは末梢からの求心性入力と上位中枢からの入力を受けている.上位中枢からの入力の一部はγ運動ニューロン-筋紡錘-求心性神経の回路を介してα運動ニューロンに作用する.γ運動線維と求心性線維で成り立つ回路をガンマ環という.筋紡錘はγ運動ニューロンによって感受性が制御されている(ガンマ・バイアス:γ-bias).筋が一定長のとき,γ運動ニューロンが興奮すると錘内筋線維は収縮してⅠa線維からα運動ニューロンヘの入力は増加する.α運動ニューロンも興奮して筋収縮が起こり,筋紡錘の緊張は緩み,Ⅰa線維からの入力は減少する.筋長は短くなった位置にとどまる.随意運動では筋短縮によって筋紡錘が弛緩しないように,上位中枢からの運動指令がα運動ニューロンとγ運動ニューロンとを同時に興奮させる.これをアルファ-ガンマ連関という.

伸張反射には,筋が伸張されている間持続して起こる緊張性伸張反射(固縮)と筋が伸張された初期にだけ起こる相動性伸張反射(痙縮)があり,相動性伸張反射の代表的なものが腱反射である.


参考文献 
理学療法ハンドブック改訂第3版    細田多穂,他
日本人体解剖学 上巻 改訂19版    金子丑之助

5 件のコメント:

  1. 初めまして、OTSです。
    質問させていただいてもよろしいでしょうか?
    固縮についてですが、
    錐体外路を抑制する方向に制御する皮質核路が障害されることで錐体外路の活動が活発になり、錐体外路に制御されているγ運動細胞が過剰に反応することで、Ⅰaを介してα運動細胞の興奮が続くこととなり、伸張反射が持続して起こる
    ということでよいのでしょうか?
    では、その際に痙縮(折りたたみナイフ現象)のように腱紡錘の興奮によって抑制されて弛緩しないのはどうしてなのでしょうか?
    また、相動性伸張反射の「相動」とは何を持って相動なのでしょうか?
    的外れな質問でしたら申し訳ありません。

    返信削除
    返信
    1. ご質問ありがとうございます。
      じっくり返信を返したいのですが、今月の26日に国家試験を控えてますので、その後お返事させて頂きます。

      すいません。なにぶん追い込みの時期なもので。。。
      コメントありがとうございます。

      削除
  2. もしご覧になった方でご返事返せる方がいらっしゃいましたら、よろしくお願いします。

    返信削除
  3. お忙しい中、見知らぬ者からの突然の質問に迅速な返信ありがとうございました。
    実は私も国試を控えております。
    お互いに頑張りましょう!

    返信削除
    返信
    1. 返信遅くなってすいません。
      国試お疲れさまです。
      ご質問の件ですが、γには静的γと動的γがあり、ジャックナイフ現象は早さ依存のγの興奮により起こっていると考えられます。
      あと、抑制が外れて痙性が高まるというイメージです。
      ちなみに、こちらのページの痙性と拘縮の項目がイメージしやすかったです。
      http://www43.tok2.com/home/henrique/study/1/brain.html
      まだまだ勉強が足りず、全てに答えられてませんが、ひとまずお答えさせて頂きました。
      また、理解を深めたいと思います。

      削除